「私ほど綺麗な政治家はいない」。

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知事選をめぐって県内各地で意見を聞いてきた私の直感からすれば、今回の疑惑は、単に「カネをもらった、もらわない」という話に留まらないだろうと思います。「なんだ、やっぱり自民党だったじゃないか！」。「知事と議会との馴れ合いが復活しているのではないか？」。そういう懸念が静かに広がっているような気がする。私は、いま起きている景気後退によって、さらに若い人たちが流失し、老後は信州で暮らしてゆくことが難しくなるのではないか？とさえ感じ始めていますから、今のような切実な緊張感が乏しい状態では、不安が強まってしまいます。

村井さんが「私ほどきれいな政治家はいない」と断言できるほど清廉なイメージを保って来られたのは、3つの要素があったから。ひとつは、前の松本市長だった有賀正さんの存在。長野2区を取材していた記者の中には、「有賀正が梃（てこ）入れすることで、何とか陣営の形になっている」と語る記者もいたほど。後援会を見ても、有賀正と村井仁は、支持者の重複が顕著でした。冠婚葬祭を渡り歩いて地を這うように泥臭く支持を固める作業は、かなりの部分を前の市長に頼っていたのが村井さん。

村井さんを支えていたふたつめの要素は、松本電鉄の瀧澤一族。地元でバス、電鉄、スーパー、ホテルなどを手広く経営していた瀧澤家は、金銭的にも村井陣営を支える力になっており、知事だった田中康夫さんでさえ瀧澤一族への接近を謀ったときには、票を意識してか「従業員は何人いるの？」と尋ねていました。しかし、アルピコと呼ばれる松本電鉄グループは債務超過に陥り、瀧澤一族は経営から一掃され、いまは八十二銀行の管理下に。八十二銀行の人たちの宴会も、アルピコ・グループのホテル「ブエナビスタ」で行われることが多いんだとか。

村井さんを守る最後に残ったみっつめの砦が、自殺した右近さん。この状況で自民党が野党に転落すれば、村井知事を支える要素は、さらに減ることになります。ただ、知事選は大きな選挙なので、有権者の中から、かなり強いエネルギーが湧き上がって来ないと、なかなか現職を変えるというところまではゆかない。

駅前のキャバ嬢は、「製造のお客さんが減った」と言っています。日経225が現在の値だと、次は生保への影響が報道されそう。銀行も、輸出企業への融資や住宅ローンが細くなれば、融資先を国内で探すことは困難になるでしょう。地方では、政党の枠組みよりも、どれだけ住民の切実な感情を受け止められるか？が選挙の分かれ目になってゆきそう。生ぬるい話をしている人を選ぶことは、地方にとってリスクになる時代に入ったと思いますが、松本あたりの地方議員の話は、ぬるいまま。たまに街で市議会議員を見かけると、私などは、「よく顔を晒して歩けるものだ」と関心するほどです。

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