数少ない戸山出のマスコミ人 古沢襄

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日経政治部ＯＢの一木豊氏の訃報を東京都立戸山高校の仲間から聞いた。暮に肝不全で死去、７４歳だった。昭和２７年の卒業生。

佐藤内閣の成立直後だったと思う。院内の平河クラブ（自民党記者クラブ）で隣の席から「戸山の先輩！」と声を掛けられた。丸顔の豪快な人物。それが一木豊氏だった。ニコニコ笑っている。

戸山高校の卒業生は官界に行く。戦前の府立四中時代には、陸軍幼年学校、陸軍士官学校や海軍兵学校の進学者が多かった。日米戦争の開戦時の首相・東條英機氏も四中から東京陸軍幼年学校に進学した口である。

だがマスコミに進んだ卒業生は少ない。それが政治部となるとほとんど見当たらなくなる。そんな話をお互いにした。院内の記者クラブでは共同通信と日経は隣合わせの席だったから仲良くなった仲間が多い。

その中にベトナム戦争で殉職した酒井記者もいた。いつも優しい男だった。政治部からサイゴン特派員になったが、ホテルで寝ていたところをロケット攻撃の破片を頭に受けて亡くなっている。

一木氏は深川誠氏の後をうけて政治部長になった。深川氏は岸派担当だったので親しかった仲間。一緒に台湾旅行をしたことがある。私たちが金門島に渡った前日に馬祖島に中国のミグ戦闘機が来襲、国府軍の輸送機が撃墜される事件が起こった。全員が殉職している。一歩間違えば、深川氏も私も殉職していたかもしれない。

その後、一木氏は昭和５９年に電波本部長になった。やがて日経新聞社の専務。まっしぐらに出世街道をばく進している感じだった。戸山高校のＯＢでマスコミの役員にまで登りつめた人は少ない。大先輩では朝日新聞の前沢健則氏、読売新聞社の水上健也氏ぐらいではないか・・・会った時に妙な誉め方をしてしまった記憶がある。

やがて新聞を卒業した一木氏はテレビ東京に転じた。社長、会長を歴任、私も共同通信の常務理事になっていたが、一木氏と会って話をする機会もなくなった。そして私より三歳下の一木氏の訃報を聞く身となった。まだまだ元気でいて欲しかったという思いが残る。

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