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幼い姉妹の殺害事件で未成年の容疑者が逮捕される。その瞬間から容疑者の家族は、マスコミや世間の目を避けるため警察の保護下に置かれ、中学生の妹・船村沙織の担当は刑事の勝浦に任される。ホテルや自宅アパート、友人のマンションを転々とするが、マスコミの執拗な追跡に行き場を無くした勝浦は、かつて担当した事件の被害者家族が営む伊豆のペンションに身を寄せる。そこへ沙織のボーイフレンドが駆けつける。[上映時間:118分]
まみんごさん
に試写状を譲っていただき、試写会で観て来ました。すごく観たい映画だったので一足早く観れて感謝感謝です。
テーマは重いというか、難しいですね。
加害者の家族を守る警察。そして加害者の家族に降りかかる悲劇。マスコミ報道の裏で起こっている、公表されることのないもう一つの事件。現代のネット社会を彷彿とさせる作品です。そしてモントリオール映画祭で最優秀脚本賞を受賞したのも納得の本当にすばらしい脚本でした。
まず驚いたのは、加害者の家族=マスコミにさらされてしまうということで、離婚・再婚の手続きをとって妻の旧姓に変えるという作業。親にしてみたら子供が殺人を犯したというだけでどうしていいかわからない状態の中、警察が家にやってきて慌しくそれらの手続きを取る。そして娘はしばらく学校には行けないからと、就学義務免除の手続きを取らされる。何も言う暇はないんですよ。本当にあっという間で流れ作業のように警察に言われるがままの行動を取らされる被害者家族。
そして加害者家族はマスコミの目を避ける為に警察の保護下に置かれ、事情聴衆を受けることになります。警察による“犯罪者家族の保護”。警察は公には認めていないそうですが、過去の事件で犯罪者の家族がマスコミからバッシングを受け自殺するケースが相次いだことから、このような形をとるようになったといわれているそうです。
加害者の妹である沙織の保護を担当することになった勝浦は、3年前、担当していた事件の捜査ミスで罪のない子供を巻き添えにしてしまったことで心に深い傷を抱えているのですが、その3年前の事件もただそういうことがあった、というだけではなく、その事件の被害者も後半に上手く絡んできます。こう絡んでくるのか!とその上手さに脱帽。そして被害者の家族も加害者の家族も、「家族を失う」ということでは同じなんだ、加害者の家族も被害者なんだと言う勝浦の意見には同意しかねる、複雑な心境の被害者家族。
被害者にしてみれば、加害者の家族も加害者と同類。心よくなんて迎え入れることができるはずがない。けれども勝浦は沙織を保護することで、加害者家族が受ける苦しみを知ったからこそ、たとえ被害者家族であってもそう言ってしまったのだろうと思います。
唯一の救いは、被害者家族が3年前の事件にきちんと向き合い、そして前向きに生きていってくれていること。息子を亡くした親が、あんな風になれるのはきっと簡単なことではないと思います。でも何が起きても人は生きていかなくてはいけない。どんなに辛いことがあったとしても、どんなに大切な人を亡くしてしまったとしても、ああやって頑張って生きていかなくてはいけないんだ、という見本を見せられたようにも思いました。
加害者のみならず、加害者家族をも執拗に追いかけ、写真を撮ったり、コメントを取ろうとするマスコミ。カーチェイスシーンは、正直そこまで本当にやるのか?と疑問に思うほどでした。そして加害者家族を追うのはマスコミだけではなかった。
現代社会を浮き彫りにしたようなネット社会。
掲示板に次から次へ書き込まれる加害者情報。そして加害者家族の情報。さらには加害者家族を保護している警察官の個人情報までさらされる。逃げても逃げても追いかけてくる人々。マスコミよりもむしろこのネット社会の方に重点が置かれていたように思います。そして実際に見たことはありませんが、2ちゃんねるをモデルにしたネットの書き込みはかなりリアリティがあったように思います。所詮、ネットに書き込みをしている人たちにとっては「お祭り騒ぎ」。被害者のことを思って、ではなく、あくまでも加害者や加害者の周りにいる人たちを叩きたい、攻撃したいだけ。すべてはひとごとで、加害者を叩くことを楽しんでいるだけ。
「ネットの世界では一番情報を持っている奴がカリスマなんだ。」
いかに人より多くの情報を提供できるか。その情報を提供したことでネット上でカリスマになれるか。そんな人たちの餌食になってしまった沙織と勝浦。
確かに罪を犯した者が絶対的に悪い。そしてその家族も「加害者の家族」として白い目で見られてしまうのはある意味仕方のないことかもしれない。加害者の親だったら、子供の責任を取れと言われても仕方にないことかもしれない。それがわかっていても、やっぱり沙織が受けた仕打ちをかわいそうだと思わずにはいられませんでした。加害者の家族であるということでこんなにも苦しめられてなくてはいけないのか。ここまでされてしまうのか。家族を失い、心に傷を負い、それでもなお、苦しめられてしまう現実。犯罪者の家族であるという事実は一生消えない。犯罪者家族の苦しみは『手紙
』を観た時も感じましたが、沙織もまた直貴のように生きていくことになるのかなぁ、と少し思いました。強く生きていって欲しいです。
また被害者家族でも加害者家族でもない、一見普通の家族であるはずの勝浦の家族もギリギリの所で繋がっていた。この勝浦の家族の存在も、家族というものを考える意味で重要な役割を果たしていたように思います。
『人を守るってことは、人の痛みを理解するってことだ。』
この映画が訴えているのは、勝浦のこの一言なのかもしれません。
佐藤浩市、志田未来、二人の演技はもちろん、柳葉敏郎、佐々木蔵之介など脇を固める俳優さんもとても良かったです。そして何より勝浦の相棒の刑事・松田龍平がクールでめちゃくちゃカッコイイんですよ。これ、やばいぐらい格好良かったです。『背筋が凍るぜ』もぐっときちゃいました。
ただ沙織の彼氏が微妙でしたね。最初出てきたとき、あまりに声が高くて女の子かと思っちゃいました。ちょっと浮いてたかなぁ。その沙織の彼氏の行動。行きすぎていた感はあるものの、彼が最後に発した一言は、悲しいけれど、その立場になってしまったら彼でなくても出てきてしまう言葉だったのかもしれません。
またリベラの歌う主題歌『あなたがいるから』がすごくいいんですよ。「主題歌も良かったよね~。」と言いながら帰ったのですが、帰りにCD売ってたら買いたいと、早速アルバム『祈り~あなたがいるから』を購入。アクオスのCMのBGMにもなっている『アリア~G線上のアリア』や、ドラマ『氷壁』の主題歌『彼方の光』なども収録されていて、これいいね、と言いながらずっと流してました。
ちなみに、1月24日(土)の公開日、フジテレビ系にて午後9時~11時10分、映画の4ヶ月前の出来事を描いたドラマ『誰も守れない』が放映されるそうです。この映画をご覧になろうとされている方は要チェックです!私も見逃さないようにしたいと思います。
試写会(@東商ホール)にて鑑賞
★★★★
箱根温泉の予約なら
幼い姉妹の殺害事件で未成年の容疑者が逮捕される。その瞬間から容疑者の家族は、マスコミや世間の目を避けるため警察の保護下に置かれ、中学生の妹・船村沙織の担当は刑事の勝浦に任される。ホテルや自宅アパート、友人のマンションを転々とするが、マスコミの執拗な追跡に行き場を無くした勝浦は、かつて担当した事件の被害者家族が営む伊豆のペンションに身を寄せる。そこへ沙織のボーイフレンドが駆けつける。[上映時間:118分]
まみんごさん
に試写状を譲っていただき、試写会で観て来ました。すごく観たい映画だったので一足早く観れて感謝感謝です。
テーマは重いというか、難しいですね。
加害者の家族を守る警察。そして加害者の家族に降りかかる悲劇。マスコミ報道の裏で起こっている、公表されることのないもう一つの事件。現代のネット社会を彷彿とさせる作品です。そしてモントリオール映画祭で最優秀脚本賞を受賞したのも納得の本当にすばらしい脚本でした。
まず驚いたのは、加害者の家族=マスコミにさらされてしまうということで、離婚・再婚の手続きをとって妻の旧姓に変えるという作業。親にしてみたら子供が殺人を犯したというだけでどうしていいかわからない状態の中、警察が家にやってきて慌しくそれらの手続きを取る。そして娘はしばらく学校には行けないからと、就学義務免除の手続きを取らされる。何も言う暇はないんですよ。本当にあっという間で流れ作業のように警察に言われるがままの行動を取らされる被害者家族。
そして加害者家族はマスコミの目を避ける為に警察の保護下に置かれ、事情聴衆を受けることになります。警察による“犯罪者家族の保護”。警察は公には認めていないそうですが、過去の事件で犯罪者の家族がマスコミからバッシングを受け自殺するケースが相次いだことから、このような形をとるようになったといわれているそうです。
加害者の妹である沙織の保護を担当することになった勝浦は、3年前、担当していた事件の捜査ミスで罪のない子供を巻き添えにしてしまったことで心に深い傷を抱えているのですが、その3年前の事件もただそういうことがあった、というだけではなく、その事件の被害者も後半に上手く絡んできます。こう絡んでくるのか!とその上手さに脱帽。そして被害者の家族も加害者の家族も、「家族を失う」ということでは同じなんだ、加害者の家族も被害者なんだと言う勝浦の意見には同意しかねる、複雑な心境の被害者家族。
被害者にしてみれば、加害者の家族も加害者と同類。心よくなんて迎え入れることができるはずがない。けれども勝浦は沙織を保護することで、加害者家族が受ける苦しみを知ったからこそ、たとえ被害者家族であってもそう言ってしまったのだろうと思います。
唯一の救いは、被害者家族が3年前の事件にきちんと向き合い、そして前向きに生きていってくれていること。息子を亡くした親が、あんな風になれるのはきっと簡単なことではないと思います。でも何が起きても人は生きていかなくてはいけない。どんなに辛いことがあったとしても、どんなに大切な人を亡くしてしまったとしても、ああやって頑張って生きていかなくてはいけないんだ、という見本を見せられたようにも思いました。
加害者のみならず、加害者家族をも執拗に追いかけ、写真を撮ったり、コメントを取ろうとするマスコミ。カーチェイスシーンは、正直そこまで本当にやるのか?と疑問に思うほどでした。そして加害者家族を追うのはマスコミだけではなかった。
現代社会を浮き彫りにしたようなネット社会。
掲示板に次から次へ書き込まれる加害者情報。そして加害者家族の情報。さらには加害者家族を保護している警察官の個人情報までさらされる。逃げても逃げても追いかけてくる人々。マスコミよりもむしろこのネット社会の方に重点が置かれていたように思います。そして実際に見たことはありませんが、2ちゃんねるをモデルにしたネットの書き込みはかなりリアリティがあったように思います。所詮、ネットに書き込みをしている人たちにとっては「お祭り騒ぎ」。被害者のことを思って、ではなく、あくまでも加害者や加害者の周りにいる人たちを叩きたい、攻撃したいだけ。すべてはひとごとで、加害者を叩くことを楽しんでいるだけ。
「ネットの世界では一番情報を持っている奴がカリスマなんだ。」
いかに人より多くの情報を提供できるか。その情報を提供したことでネット上でカリスマになれるか。そんな人たちの餌食になってしまった沙織と勝浦。
確かに罪を犯した者が絶対的に悪い。そしてその家族も「加害者の家族」として白い目で見られてしまうのはある意味仕方のないことかもしれない。加害者の親だったら、子供の責任を取れと言われても仕方にないことかもしれない。それがわかっていても、やっぱり沙織が受けた仕打ちをかわいそうだと思わずにはいられませんでした。加害者の家族であるということでこんなにも苦しめられてなくてはいけないのか。ここまでされてしまうのか。家族を失い、心に傷を負い、それでもなお、苦しめられてしまう現実。犯罪者の家族であるという事実は一生消えない。犯罪者家族の苦しみは『手紙
』を観た時も感じましたが、沙織もまた直貴のように生きていくことになるのかなぁ、と少し思いました。強く生きていって欲しいです。
また被害者家族でも加害者家族でもない、一見普通の家族であるはずの勝浦の家族もギリギリの所で繋がっていた。この勝浦の家族の存在も、家族というものを考える意味で重要な役割を果たしていたように思います。
『人を守るってことは、人の痛みを理解するってことだ。』
この映画が訴えているのは、勝浦のこの一言なのかもしれません。
佐藤浩市、志田未来、二人の演技はもちろん、柳葉敏郎、佐々木蔵之介など脇を固める俳優さんもとても良かったです。そして何より勝浦の相棒の刑事・松田龍平がクールでめちゃくちゃカッコイイんですよ。これ、やばいぐらい格好良かったです。『背筋が凍るぜ』もぐっときちゃいました。
ただ沙織の彼氏が微妙でしたね。最初出てきたとき、あまりに声が高くて女の子かと思っちゃいました。ちょっと浮いてたかなぁ。その沙織の彼氏の行動。行きすぎていた感はあるものの、彼が最後に発した一言は、悲しいけれど、その立場になってしまったら彼でなくても出てきてしまう言葉だったのかもしれません。
またリベラの歌う主題歌『あなたがいるから』がすごくいいんですよ。「主題歌も良かったよね~。」と言いながら帰ったのですが、帰りにCD売ってたら買いたいと、早速アルバム『祈り~あなたがいるから』を購入。アクオスのCMのBGMにもなっている『アリア~G線上のアリア』や、ドラマ『氷壁』の主題歌『彼方の光』なども収録されていて、これいいね、と言いながらずっと流してました。
ちなみに、1月24日(土)の公開日、フジテレビ系にて午後9時~11時10分、映画の4ヶ月前の出来事を描いたドラマ『誰も守れない』が放映されるそうです。この映画をご覧になろうとされている方は要チェックです!私も見逃さないようにしたいと思います。
試写会(@東商ホール)にて鑑賞
★★★★
箱根温泉の予約なら
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