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恵比寿の思い出、青いワンピース 23:16 |

 いつのことだったか、とある女性と会うことになりました。それはどういうことかというと、ミクシィで絵とか音楽のはなしで妙に馬があって、それで映画を観る約束をしたのです。

 ちょうどふたりの気に入っていたデビッド・リンチの映画が封切りになった次の日曜日で、ふたりは恵比寿ガーデンプレイスで待ち合わせをすることにしたのでした。彼女は恵比寿駅から繋がる通路を出て信号を渡ったすぐのところ、つまり恵比寿ガーデンプレイスの入口と呼べるあたりのベンチに座っていて、僕は彼女の外見について殆んど情報がないのにも関わらず、そのベンチに座った神秘的な青のワンピースを着た女性が彼女であるとすぐにわかりました。写真でしかみたことのないリグリアの海の青さを思わせて、僕は心が踊りました。まっすぐの黒髪はささやかな風にそよぎもせず、ただ垂れていました。彼女をみている僕のほうへと彼女が満面の笑みを投げかけてきて、それをサインに決めていたようにふたりは何の違和感もなく映画館へとむかいます。そのときにはもう、手をつないでいました。

 焼けるような太陽の熱を交わすように三越のなかを通って、とちゅう、喫茶店に入ってそれまでミクシィでやりとりしたようなことをもう一度指でなぞるように、丁寧に話し合いました。彼女は僕がかつてアナルセックスをしたことがあると話したことに嫌悪感を感じていたのに、そのことを何度も何度も僕に尋ねてきます。僕はローションも器具も何にも使わずに女性のアナルを愛撫するのが好きで、決して開発とか拡張とかいう野卑な低俗なことばは使わずに、僕のアナル観を彼女に話しました。ミクシィのメッセージに書いたのと殆んど同じことを。



 デビッド・リンチの映画は本当に難しくって、ふたりは断片をまるでひとつの絵画のようにとらえては、その描写に一喜一憂しました。あらすじとかそういうのはどうでもよくって、ともすれば映画を観るという行為自体に意味がなかったように、ただ会うきっかけでしかなかったように、映画の最中にふたりは手をつなぎ、まるで何年も付き合ったあとのように指を絡ませ、互いの太腿をまさぐり、その上、キスを交わしさえしたのです。

 映画館を出ると上映予定の映画の告知が掲示されていて、僕は彼女が手洗いに行っている最中、それをみていました。視界の端のほうに青いワンピースがひらりと揺れるのがみえて、それで僕は彼女が手洗いから戻ってきたことを知りました。「ごめん、待った?」彼女は悪びれもせずそういうので、僕は「いや、ぜんぜん」と型どおりの返事をして、彼女の右手を取り上げました。夏だのにひんやりと冷たい彼女の手の指が僕の左手に絡まって、手のふたつは指の付け根までしっかりと深く重なり合いました。なんだか動悸がして、僕は夏の暑さが恋しくなりました。映画館は冷房が効きすぎていたのです。



 「キミさ、手汗すごいね」彼女は映画館を出るとそういいました。「ビックリしたわよ、ベチャベチャしてるんだもん、フフッ」小さく笑うと、彼女は僕の手をなお強く握り締めます。別にイヤだって言ってるわけじゃないのよ。そう僕に告げる手の力の強さでした。僕はそれを当然のことのように感じました。というのも映画のあいだじゅう、僕が彼女の太腿をさすり、それからおっぱいをブラジャー越しに触って、彼女は僕の蒸れた股間に、陰茎と睾丸がいっしょくたになって汗まみれになっているところに手をさし伸ばしたあとだったからです。どこへ行くんだろう。情けない男だとお思いでしょうが、なにせ僕はそのころ、大阪から出てきたばかりで東京の地理はもちろん、恵比寿という街のどこに何があるのかなど知りもしませんでしたから仕方ないのです。「ね、行こ。ホテル、ね?」彼女はブルウの空の遠くのほうを、ずうっと前を見たまんまでそういいました。僕は「うん」と小さく返事をしました。僕には、大阪に彼女がありました。遠距離恋愛というやつです。



 僕はそういう罪悪感のなかで、彼女とセックスをするのだ。そう覚悟を決めました。覚悟を決めるなどという言い方は卑怯にほかなりません。要は弱かったのです。新大阪駅の25番ホームで、分厚い強化硝子越しに僕を見送ったYという彼女を裏切ったのです。そういう罪の意識はそれでもなお、僕の飢えた性欲を、異性を抱きたいと思う衝動を留めることはできませんでした。

 恵比寿駅へと続く長い廊下を歩いていました。僕の手はぐっしょりと汗をかいて、それがふたりの間をさえぎる唯一の障害のようにも思われ、あるいはふたりの情動をひとつにまぐわい絡ませる潤滑油のようにも思われました。

 「やっぱりやめようや」そう言ったのは僕でした。それまで伏目勝ちだった彼女の目がさらに沈んで、涙が溢れました。彼女は彼氏と別れたばかりで、それから僕はその別れた彼氏に似ているらしいのでした。彼女は過去の恋愛が忘れられず、僕を求めようとして。僕は刹那的な衝動を抑えきれずセックスに走ろうとしたのです。ふたりはどちらもとても弱く、正直であったけれど、どうやったってその弱さは、正直さはふたりを正気に立ち返らせたのです。彼女は泣きながら、「やっぱダメだよね、こんなの」彼女の涙が珠のように丸いまんま落ちて、汚れた駅ビルの床のタイルにぶつかって広がりました。「それじゃね、ここで別れよ」「またミクシィでメッセージ送るから。嫌いになったりしないで」彼女は僕に遠距離恋愛の彼女が大阪にあることを知りません。ただの、大阪から転勤で東京に出てきた、別れたばかりの彼氏に似ている男だとしか思っていなかったのです。いちばん卑怯なのは僕でした。青いワンピースが山手線の改札へと吸い込まれ、人ごみに飲み込まれてゆくのをみながら、僕は自分が情けなくって仕方ありませんでした。8月の熱い、よく晴れた日曜日のことでした。

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